香りと言う名の美しく残酷な物語
この作品には様々な香りが漂っている。
オープニングのパリ街角のグロテスクな映像からは、異臭・悪臭があたかもその場に漂っているような気分にさせる。
そして一転、調香師の店からは、バラやジャスミンそのほか様々な「パヒューム」の原料となる花や素材の香りが記憶から蘇る。
この主人公の青年は、そんなありきたりの香りではなく、人体が持つ言うなれば「体臭」を摂取しようと次々と殺人を犯す。
しかし、そこに罪の意識は存在しない。
生まれ落ちたときに母に見捨てられ、辛い孤児院やその後売られた皮なめし工場の生活。
人間としての尊厳を奪われた過酷な生活には、道徳心など知る由もなかった。
真に不幸な青年であるのだ。
そんな彼がある一人の少女から漂う至福の香りが忘れられず、それを再現しようとその方法を模索する。
バラと同様に熱湯で煮出したりと。
しかし、映像では残酷さはなく、水に漂っているように表現されている。
重く、悲しく、そして美しい映像、音楽。
このままラストまで私たちの想像の範疇で進行して行くと思いきや、
そこにはとんでもない落とし穴があった!!
ここではネタばれになるので、一切その驚愕のクライマックスについては触れないが、誰でも思わず目を見張ることだろう。
彼は願いであった「誰にでも好まれる香り」を作り出すのだが、その香りはと言うともちろんそれは私たちの想像の範疇でしかない。
しかし、香水の持続時間ノートを頭に入れると、なんとなくその香りの特性が頭に浮かんでくる。
トップノート(30分〜2時間)」「ミドルノート(2〜6時間)」「ベースノートまたはラストノート(6時間〜数日)」
この3つのノートはそれぞれ4つの素材から成り立ち、すべてで12である。
トップノートは最初のパッションであり、最後の12個目の素材はすべての優位に立つということである。
こんなことから彼の犠牲となった女性を思い浮かべると、少しそれが見えてくる。
主人公の青年を演じるのはベン・ウイッシューと言う舞台出身の無名新人俳優であり、台詞が少なく、ほとんど表情や体で表現すると言う難役を見事にこなしていた。
彼はイギリス人なのだが、風貌はラテン系と言った感じで、若き日のアントニオ・バンデラスを思わせる。
そのほか、作品のスパイス的存在として、ダスティン・ホフマン やアラン・リックマンなどの名優も登場する。
私的には、音楽、映像、ストーリー性などすべて満点に近いすばらしい作品であった。
ぜひ、驚愕のクライマックスを味わってみてはいかがであろうか。
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