今を生きる私たちに深いテーマを投げかける近未来映画
人類がもし生殖能力を失ったら?
これほど恐ろしい人類滅亡のテーマはないだろう。
子孫繁栄を閉ざされた人々は、滅亡にさらに拍車をかけるよう暴徒となり、国々は風前の灯と言った状況下、英国だけは不法入国者の徹底した取締りで辛うじて治安を維持している。
この作品はそんな状況下の英国を舞台とした近未来サスペンスである。
見ているものをも鬱にさせるような暗く荒涼とした風景は、人類の絶望に満ちている。
生殖能力を失ったのは人類だけで、数十年後にはこの地球には、人間に取って代わって、犬や猫、その他の家畜、野生動物たちがこの地球を支配するであろう未来の事実を、足元にじゃれつく子猫が予感させる。
そんな子猫をかわいいと思うどころか、なぜか猫好きの私でさえ、怖いと感じる暗示に満ちたワンシーンである。
滅亡の道しか残されていないと知ると、人間の行動は両極端になる。
自暴自棄になって、暴動を起こし、やりたい放題に罪を犯すもの
運命を受け入れて静かに自分の生、人類の生を待つもの。
この作品でもそうした人間の行動がよく描かれている。
この作品は、宇宙人の侵略や策略で滅びるのでもなく、原因不明の不妊がその要因なので、SF的な派手な見せ場はない。しいてあげるならば、アルフォンソ・キュアロン監督が徹底的にこだわったという8分間の長回しのシーン。
人類は、動物的本能である「母性」が徐々に薄れ、昨今では「子殺し」と言う忌まわしい事件が、メディアを賑わしている。
そして「堕胎」、「避妊」等生きるものが本能的に持っている「子孫繁栄」と言う義務より、「性の堕落」の上において、それらは二の次になっていることも事実である。
そんな人類がもしこの作品のように子孫繁栄の道を閉ざされ、未来を閉ざされたら?
娯楽作品と言うよりは、今を生きる私たちに深いテーマを投げかけている作品であると思う。
それ故、好き嫌いがはっきりと分かれる映画ではないだろうか。
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