この『ホステル』は『キングコング』や『ナルニア物語』を抜いていきなり全米TOPを記録した大ヒットホラー映画である。
と言っても2週目には1位から落ちてしまったが・・。
監督は、キャビン・フーバー(2005年)のイーライ・ロス 。
上記の作品はとんでもない駄作であったが、 『ホステル』は一転して魅力的な舞台設定でホラーファンを惹き込む内容であった。
もし舞台設定がアメリカだったら、これほどまで惹き付ける
ことは決してないだろう。
舞台が旧東ヨーロッパと言うのがミステリアスな好奇心を刺激し、今だベールに閉ざされた社会主義国では、我々が想像出来ない何かが存在しても決して不思議ではないのだ。
入国にもビザが必要だし、強制両替えなどがあり、西の国々とは違い行動は圧制され意のままにはならない部分が多くある。
そしてマフィアが思いのほか勢力を伸ばし、裏社会を牛耳っているのも事実だ。
国家公務員である一般市民は、賃金だけでは西側諸国の物品を買うこともままならない。
マフィアにちょっとした手引きをしたり、見て見ぬ振りをすれば、いとも簡単に大金を手にすることが出来るのである。
このような仕組みの国家だからこそ、どのような犯罪が行われていようが表舞台に立つ危険性は少なく、暗黙の了解として成り立っていたとしても不思議ではない。
この映画の設定は、そんな国のとある美しい町に秘密裏に存在する『拷問・殺人クラブ』である。
会員は、さまざまな国の裕福な実力者達。
監督であるイーライ・ロスは、1万ドルで拷問殺人が出来るというタイのサイト広告を見て、この映画のアイデアが生まれたということである。
どこかにそんなクラブがこの世に存在していても、決して不思議ではない。
それがベールに閉ざされた旧東ヨーロッパと言う設定なら、なおさらリアリティ深く迫ってくる。
拷問された若者達の絶唱シーンが妙に生々しく、この作品制作で520リットルもの血液が使われたと言うおびただしい血の量。
そして、数々の拷問用具。
それらを見ているだけで、それらをシーンとして使われていなくとも、想像してしまうのである。
スクリーン越しに、血の匂いが伝わってくるような錯覚さえ覚え、まるで悪夢を見ているようであった。
被害者に日本人女性も登場するのもミソである。
と言ってもおかしな日本語を話すので、思わず苦笑してしまったが。
そしてこの作品の最大の特徴は、加害者側の情報を出来るだけ押さえ、被害者側の視点で描いている為、観る者は映画の中の被害者とある意味一体化して恐怖を体現してしまうということである。
そしてもうひとつ忘れてはならないのが、大人の殺人者以上に恐ろしい子供達の存在である。
忽然と集団で姿を現し、盗みたかりはもちろんのこと、暴行・殺人もいとも簡単にやってのける将来有望な(?)マフィア予備軍なのである。
表情のない子供達の顔を見ていると、大人の殺人者以上に狂ったものを感じ、薄ら寒いものを感じた。
美しい町並みの裏に隠された恐ろしいほどの地下社会の現実。
映画のタイトルであり舞台設定のひとつ『ホステル』は、バックパッカー経験者なら必ず利用したことがあるであろう。
現実味を帯びた設定であり、そのリアリティさ故か変に余韻が残り、いつまでも消えない。
チェコやスロバキュアは、一番今行きたい場所であるが、きっとその地に足を踏み入れたとたん、この映画のさまざまなシーンが蘇ってきそうである。
近年話題になったホラー作品と言えば、まず『ソウ』を思い浮かべるが、その作品設定が非現実的で突っ込みどころ満載に対して、この『ホスタル』の設定は、『あっても不思議ではない。もしかして存在するかも知れない』と言うリアリティに満ちた作品であった。
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