私は原作者のチャールズ・ディケンズの大ファンである。
彼の原作による映画はもちろん、TVドラマなどはすべて観たし、英国にある彼の住んでいた家なども訪れた経験がある。
このオリバー・ツイストは、1947年にデヴィッド・リーン監督、1967年にマーク・レスター主演で映画化され、その他イギリスのTVドラマとしても再演されている。
そして、2006年日本公開の『オリバー・ツイスト』は、あの『戦場のピアニスト』の監督である『ロマン・ポランスキー』の作品である。
ロマン・ポランスキー監督といえば、独特の美学を持つ個性的な監督であるが、この作品ではそんな彼の美学がいたるところに溢れている。
まず音楽 、日本版では『BOA』がカバーしているが、ぜひオリジナル版で聞いて欲しい。
限りなくやさしく美しい曲である。
そして80億円の予算を使い、19世紀のロンドンを再現したという、リアルでまるで匂いまで伝わってきそうな町並み。
よく演出が平凡だという書き込みを目にするが、これはあくまで19世紀の文豪の作品であって、原作の雰囲気を壊すような演出は決してして欲しくない。
他のディケンズの作品をご覧になった方には理解できると思うが、演出にそう驚くような開きはない。
ディケンズ作品の登場人物には、悪人と善人の真っ二つに分かれる。
悪人はとことん悪であり、善人はピュアな心ゆえ、その悪に翻弄される。
しかし、最後には悪は成敗され、善人は幸せになると言った筋書きである。
19世紀文学とは、このように非常にわかりやすいものが多い。
昨今の映画のように、悪が打ち勝つなどと言うのはありえないのだ。
この作品を批判する輩は、19世紀文学の根本、またディケンズの原作を全く理解していないと思われる。
この映画の見所は、アカデミー賞主演男優賞受賞経験を持つ、演技派俳優ベン・キングズレーの怪演ぶりである。
悪人ではあるのだがどこか最後まで憎みきれない、少年スリ団を率いる親分を、誠見事に演じていたのが印象的であった。
そして主人公オリバーを演じるバーニー・クラークは新人であり、2006年1月現在12歳である。
悲しげで澄んだ瞳とスレンダーな体つきはオリバーそのものである。
女性なら思わず抱きしめて、世話をしてあげたくなってしまうような可愛い少年であった。
彼が幸せを掴むまでは苦難の道である。
両親はすでに亡くなり、残された彼は救護院に引き取られるが、慈悲の欠片もない大人たちにこき使われ、食事は少量のオートミールだけ。
そんな救護院の生活からまたさらに過酷な生活へと運命に翻弄されながらも、生きていくしかないオリバー少年。
この映画は、現代のぬくぬくとわがまま放題で、耐えるということを知らない子供達にぜひ見せてあげて欲しい。
日本人は、まじめに働いてさえいれば少なくとも餓えに苦しむことはない。
日本にも孤児院と言うものもあるが、少なくとも食事は満足に与えられ、労働を課することもない。
これは19世紀ロンドンだけの話ではなく、現在も世界中に多くの子供達が餓えに苦しみ、そしてその幼い命を散らしている。
学校へも行けず、重労働を課せられ、このオリバーと同様苦しむ子供達が数多く存在しているのも事実だと言うことも子供たちに理解して欲しいと思う。
これからもディケンズ作品のリメイクをどんどんして欲しいと思う。
古典には、教訓と言うものが存在し、それはあまりに単純なものではあるが、豊かな生活で忘れかけていたものを呼び戻すことであろう。
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