ジャンル:ミステリー、14世紀イングランド 監督: ポール・マクギガン 出演: ウィレム・デフォー, ポール・ベタニー, ヴァンサン・カッセル他 製作国:イギリス・スペイン 日本公開:2003年製作・日本未公開 2005年8月DVD発売 評価:★★★☆
14世紀イングランド、ある罪を犯したことから逃亡の身となった神父が、ひょんなことから旅回りの劇団の一員に。 一座が行き着いた村では、口のきけない女が少年殺しの罪で裁かれようとしていた。 一座は金儲けのため、少年殺しの一件を舞台にして上演するが、それがきっかけで真実が暴かれていく……。
大ベストセラー作家バリー・アンズワースの原作を映画化した作品で、荒涼とした中世イングランドを舞台にしたミステリーである。 ミステリーと言っても舞台が中世なので、科学的検分が出来るわけもなく、遺体に残された傷跡から推理し、真実を旅芸人一座が舞台にして演じ、暴くと言うところが中世らしい舞台設定である。 現代なら、弁護士が法廷で真実を暴くところだが、この時代の法は領主であり、どんな真実も領主によって捻じ曲げられる。 領主=絶対的なものであり、封建社会では「初夜権」など言うものも存在し、領主は花嫁と一夜を共にする権利もあった。 無秩序なこの時代、そんな無謀な法も領主の「欲求」から何でもまかり通るこの時代、耐え忍ぶことが生き残る術なのである。 そんな時代において、 神父でありながら村の既婚の女性と関係を持ち、挙句にその夫に見つかり逃亡と言う過去を持つ元神父が自らの命を掛けて、旅芸人一座の協力を得て、真実を暴き出していく。 荒涼とした風景には、「暗黒時代」と呼ばれるこの時代に相応しく、「ペスト」などの疫病がはびこるこの時代、いつも死の影が漂っている。 そんな雰囲気が良く出ており、重々しい中にも旅芸人が演じる劇を観ることが、暗いこの時代の数少ない娯楽だったのだろう。 この時代の民は多くが文盲であり、文字はもちろん書くことも読むことも出来ない。 芝居に台本などなく、せりふもアドリブで補っていた部分も多く、そんな旅芸人の劇を創作し、演じるまでの過程も興味深い。 前半はちらりとしか登場しないが、領主を演じるヴァンサン・カッセルの特異な風貌が実にはまり役で、「ジェヴォーダンの獣」でも貴族役を演じていたが、エキセントリックな貴族を演じさせたら、右に出るものはいないとつくづく感じた。 そして、個性派役者である「ウィレム・デフォー」のいつもながら渋い演技と、最近日本でも徐々に注目を浴びている神父役の「ポール・ベタニー」の迫真の演技も実に良い。 これは冒険活劇のように派手な演出は皆無であり地味な作品であるが、中世を舞台としたミステリーとしては佳作であると思う。 Homeへ(映画コーナーには、日本公開前の作品プレビュー多数あります。)