奥多摩のはずれにひっそり佇む、夢の中の故郷
奥多摩湖から「奥多摩周遊道路」に入ると、1ヶ月以上前に降った雪があたかも数日前のように道路わきに数十センチも積もっていた。
土曜だと言うのに行きかう車もない。
蛇行する道をせわしくハンドルを切り返し、やっと檜原村にたどり着いたときには、時計はもう午後3時を回っていた。
車外へ出ると、ひんやりとした空気が肌を刺す。
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| 氷ついた水車 |
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| 食事処 |
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| 兜造りの屋根 |
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| 旅館棟 |
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| 食事処内部 |
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食事処には仏壇がある |
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一族の遺影が飾られている |
「うっ、寒い」
思わず友人と二人で身震いする。
ここは同じ奥多摩であっても、他所よりも数度は温度が低いのであろう。
山荘の庭にある水車は凍りつき氷柱となり、微動だもしない。
山荘の宿泊棟である別館は2階建ての近代的な建物であるが、食事処は本館の築400年以上の歴史を持つという民家である。
屋根は兜ににているところから兜造りと呼ばれているそうだ。
木材建築を400年以上の間維持をするのは並大抵の苦労ではないだろう。
近代建築に移行する中、一族の財産としてそれを長い歴史の中で守り続けてきたことはまさに賞賛に値する。
引き戸の玄関をくぐりぬけると、
「いらっしゃいませ」
と言う声と共に女性が出迎えてくれた。
通された広間は、もう食事時間をとうに過ぎていたので、誰も他には客はない。
広間にはストーブが何台か置いてあるが、この広さでは暖めきれないのか、 底冷えがする。
敷居の上には、一族の遺影が飾られ、部屋の片隅には大きな仏壇が一族の繁栄を見守るかのように祀られている。
数十年前までここは他所とは分断され、行き来が困難だったと言う。
それ故昔ながらの生活をかたくなに守り続け、結果、生きた山里の生活の歴史を現代において垣間見ることができるのである。
それもどこまでも自然な形で。
田舎の雰囲気を出すための小細工は一切ない。
しかし、トイレなどは、ありがたいことに近代的設備である。
さすがにそれだけは、田舎の雰囲気は御免こうむる。
落ち着いたところで、暖かいお茶で冷え切った体に暖をとりながら、あれこれと迷いながら昼食の注文を決める。
(メニュー1)、(メニュー2)、(メニュー3)、(メニュー4) 、(メニュー5)
この山荘の名物は、「山菜小皿料理」である。
やはり、山里には山里らしいの料理がいい。
山菜12品・とろろ・川魚塩焼・麦御飯・御味噌汁の「杉」と言うコースと、めったに食せない川魚の生き作りを注文するが、
「今日は団体の泊り客がいて、料理人が準備に忙しく、川魚の生き作りは無理」だという。
川魚は寄生虫がいる為、それを生で食すには熟練した調理人が包丁を振るうしかない。
川魚を生で調理できる料理人は貴重である。
たぶん一人の調理人が受け持っているのであろう。
泣く泣く諦め、代わりに山菜のてんぷらを注文する。
しかし、山菜のてんぷらは3月からであり、2月初旬の今は出来ないと言う。
確かに山菜は春の味覚である。
この雪が残るこの季節にはまだ山菜は早い。
小皿に使うものは、 塩付けにし保存してあるのだろう。
肩を落とし、がっかりして言葉をなくしている友人と私を見て、
「ちょっとまってね」
と言い残し係りの女性は奥へ消えて行った。
しばらくすると戻ってきて、
「なんかあるもので適当にてんぷらを揚げてくれるって」
と笑みを浮かべながら言った。
付き出しのフキの煮物をつまみに熱燗を飲みながら料理を待つ。
冷え切った体にジワッっと浸みる。
時代劇にでも出てきそうな古い民家で、素朴なつまみと共に酒を飲むのは、味わい深いものである。
お銚子半分で真っ赤になる私だが、日本料理を味わうときにはここ数年日本酒は欠かせない。
やはり日本料理には日本酒が一番である。
おちょこに2杯目のお酒を注いでいると、大きな盆で料理が運ばれてきた。
まずは「山菜」と「とろろ」である
12品の小皿は2品がこんにゃくである。
こんにゃくの煮物は薄味であるが、舌触りが滑らかで絶妙な味わいだ。
ゆっくりと1品1品味わいながら、箸を口に運ぶ。
一気に食べてしまってはあまりにももったいない。
しばらくすると、麦ご飯と味噌汁が運ばれてきた。
小松菜と油揚げの味噌汁は、見た目はまるで吸い物のように澄んでいる。
箸で混ぜると、うっすらと濁ってきた。
これは自家製三年味噌を使っているそうだが、見た目は「味噌が少ないんでは?」と思うほど薄そうに見えるが、
飲むとまたこれは市販の味噌汁とは違い、奥深い味わいがある。
そして具の小松菜の風味が生きている。
とろろは擦ってそのままなのか、味がないのでしょうゆを入れ、麦ご飯にかける。
まさに素朴な味わいである。
続けて「山女の塩焼き」が運ばれてきた。
少々塩が足りないのと焼き加減がまだ甘い。
がぶっとかぶりつくには、皮が柔らかすぎる。
川魚は、皮がおいしいので、やはり焦がす一歩手前の状態まで香ばしく焼き上げたほうがおいしい。
それと、メス魚のようで、お腹からゴロゴロと卵が出てきた。
見慣れない私たちには少々不気味であった。
虹鱒の甘露煮付のセットにすれば良かったと二人して後悔する。
虹鱒の甘露煮がつくのと、この山女の塩焼きがつくセットでは、他の料理の内容は同様であるが、値段がこちらのほうが
1150円高い。
山女の塩焼きが単品で注文すると630円なので、後から考えると値段のつけ方に疑問が残る。
安い虹鱒の甘露煮付のセットを注文し、単品で刺身を追加するのが得策と言えるであろう。
虹鱒を食べているとき、天ぷらが運ばれてきた。
裏山から先ほど取ってきたという新芽の山菜と舞茸の天ぷらは、さくっと香ばしく、あっさりした献立に良いアクセントになった。
抹茶塩をつけて、一足先に春の味覚を堪能する。
これだけ食べても、所詮三菜と身が少ない川魚である。
朝から空っぽの胃には、少々満腹感は少ない。
食後も談笑しながらゆっくりとお茶を飲み、ゆっくと流れる時を楽しむ。
山里の春は、もうすぐそこまで来ている。
あと1ヶ月もすれば、春の息吹きを肌で感じることが出来るであろう。
そうしたらまたここへ戻って来よう。
夢の中の故郷へ・・・・・・・・・。
2005年2月5日(土)三頭山荘にて
店名:三頭山荘
HP:http://park17.wakwak.com/~mitou/
所在地:東京都西多摩郡檜原村数馬2603 地図
定休日:宿泊食事共木曜日
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